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PSYCHO-PASS ASYLUM 1 感想

PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

 

流浪のハッカーたるチェ・グソンの魂は、 いかにして槙島聖護と邂逅したのか? 執行官・縢秀星の人生を変えた料理とは? 大ヒットアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』 シビュラシステムから疎外された者たちを描く スピンオフノベライズ第1弾 〈シビュラシステム〉の調査のため、日本に潜入した工作員チェ・グソン。 彼には、母国朝鮮人民共和国に残してきた最愛の妹スソンがいた。 しかし帰国を命じられた彼を過酷な運命が待ち受けていた―― 流浪のハッカー槙島聖護に出会うまでを描く「無窮花」、 執行官・縢秀星の人生を変えた料理にまつわるエピソード「レストラン・ド・カンパーニュ」の 全2篇収録の『PSYCHO-PASS サイコパス』スピンオフノベライズ第1弾

 

サイコパスはアニメ1期2期、劇場版まで視聴済みです。

あらすじにある通り、本作は作中でも最大の敵であった槇島の協力者チェ・グソンと執行官、縢秀星の話となります。

 

グソンはアニメではかなり優秀な人物という事を何度も仄めかされていますが、彼個人の話はほとんどありません。朝鮮人民共和国という架空の国家出身の外国人、凄腕のハッカーくらいの情報でしょうか。あとは独特な色を放つ義眼。

言ってしまえば、それくらいの情報しかない。だから、読者としては彼は最初から優秀で、余裕のある立ち居振る舞いが出来る人物と勝手に想像している節があるのは否めない。

否めないではあるが、それにしてもこの小説でのグソンはどうだろう。思想として槇島に近付いたのかも知れないが、果たして能力は協力者足り得ただろうか。凄腕ハッカーとしての活躍もなければ、余裕もない。

要はキャラが想像していたのと違うというのが一番の印象か。正直、アニメ本編を無視してこれだけ読めばおそらく面白い。理不尽に振るわれる不幸を上手く描かれていると思う。しかし、それもアニメのグソンのイメージがあるから、理不尽に感情移入出来るのかも知れない。とすれば、キャラに違和感を抱くのはどうしようもない。楽しもうと思えば、思うほど印象が乖離していく。

だから自然と展開も首を傾げる場面が幾つか出てくる。一々指摘するような真似はしないが、全体的に無理があるのではないか、というのが大雑把な印象ではある。

 

対して縢秀星の話。

こちらは総じて面白い以外の感想は持たなかった。ちょっと説明がくどいのと、縢がお節介過ぎると思ったものの、面白いという感情の方が勝った。特に縢の最期を知っている読者なら、なかなか感慨深いものがあると思う。彼の料理の技術が彼の死後もまだ生きているという事実は、胸に来るものがあるからだ。

ただ、グソンの時も思ったが、この作者はこの作品でグソンや縢を完成させようとしているように思えてならない。縢も最後の1,2ページさえなければ最高だったと思うが、最後の語りは正直余計に思えた。それだけが残念ではある。

 

しかし、縢の話が面白かったのは間違いない。色々と想像の余地を残しているところが特に好きだ。

 

 

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